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「自分が持っているものを見定めて、少しでも 伸ばす努力をしよう」などと話す金美齢さん =徳島市のアスティとくしま |
社会への貢献 幸せなこと
長所伸ばす努力を
私のモットーは「清く、正しく、美しく」。これを掲げて生きることは至難の業だ。美しく生きることについては、一人一人違う感性や価値観があるかもしれない。清く、正しくは何とかなるけど、全ての人に納得してもらえる美しい生き方とは何か。私なりにいつも考えている。
私はいま81歳。記憶力は衰えても、読解力は衰えていない。成長し続けていると思っているし、そう言い聞かせている。それに、白髪になってから派手な色の服が似合うようになった。年を取ることは悪いことばかりじゃない。
コインの裏表のように、全てに一長一短がある。でも、良いことを伸ばす努力ができるのが人間の知恵だ。私はスーパーモデルになりたかったけど、脚の長さが30センチ足りない。では、私の特徴は何か。耳が良く、つまりは言葉に対して敏感で、発音も正確にできる。だから言葉で勝負する以外にはない。
人はそれぞれに違っていて、それぞれに足りないものがある。無い物ねだりをするのでなく、自分が持っているものをしっかりと見定めて、少しでも伸ばす努力をすることが大切だ。
ノーベル賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授は「人のためになる、人の役に立つことをしたい」とおっしゃった。人間はある意味では一番素晴らしい存在でありながら、一番弱い存在でもある。生きるということは、あらゆる面で人の世話になっているということ。生まれた時から保護され、人の世話になって成長していくわけだから。
恩返しできるようになった時、家族だけでなく、社会に対して何らかの貢献ができることは幸せなこと。自分がどう生きていくかと考える中で、「人さまの役に立つように」と思うことは間違いなく美しい生き方だ。
誰かの世話になることや何かをもらうことばかりを考えるのは、美しくない。日本には「お互いさま」という良い言葉がある。お互いさまであることをわきまえ、自分ができることは何かを考えなくてはいけない。個人ができることはささやかでも、みんなが志を持って動けば非常に大きなものになる。そういう人生であってほしい。