徳島新聞 女性クラブ

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お知らせ

2016年6月9日木曜日

徳島新聞女性クラブトークイベント 茂木健一郎さん

 徳島市のアスティとくしまで開かれた女性向け会員制クラブ「徳島新聞女性クラブ」のトークイベントは、脳科学者の茂木健一郎さんが「脳を活かして生きる」と題して講演。最新の脳科学の知識を織り交ぜながら、「幸せに生きるためには、自分の長所と短所をありのまま受け入れることが大切だ」と語った。要旨は次の通り。(山口和也)
 
「ありのままの自分を受け入れることが幸せにつながる」
と語る茂木さん=アスティとくしま

人生ありのままが幸せ
欠点も認め
自分らしく


 きょうは元気になるための話をしたい。人間の脳はマイナスをプラスに変えるすごい力を持っている。つらいときや苦しいときほどユーモアが大切で、ユーモアは苦しみやつらい経験をエネルギーに変えることができる。
 脳は、苦しい経験をしたときに、麻薬に似た特別な効果がある脳内物質を出す。だが、ドラッグのように楽してもらおうと思っても駄目だ。脳内物質は、苦しいことにあえてチャレンジする人へのご褒美として用意されている。
 周りを明るくさせる、すてきな人は、ものすごい苦労を経験しているケースが多い。青森県で農薬や肥料を一切使わない「奇跡のリンゴ」の栽培に成功した木村秋則さんは、ポジティブを絵に描いたような人。無農薬栽培が何年たってもうまくいかず、経済的にも困窮した。追い詰められたが、土作りの大切さに気付いて成功した。人生で一番大事なのは、前向きに生きることだ。
 最近の研究で、性格の長所と短所は表裏一体ということが分かってきた。自分は落ち着きがなく、じっとしていられない性格。だが、切り替えが早く、大学で授業をしたり、本を書いたり、いろんなことができる。反対に切り替えの苦手な人は、コツコツと物事を続けられる人が多い。
 変人は自分では変人と思っていないように、自分の個性は自分では分からない。他人から指摘されて初めて自分の個性に気付く。他人は自分を映す鏡で、鏡を見れば自分の個性を客観的に見詰めることができる。だが、理想と現実にはギャップがあり、人から言われた欠点は認めたくないもの。認めるかどうかは自分次第だ。
 学校の勉強ができる子が、必ずしも良い子ではない。勉強ができることは欠点でもある。例えば企業の経営者には勉強が苦手な人が少なくない。成績が良い人は何でも自分でやろうとするが、勉強が苦手だと自覚している人は、自分ができないことをアウトソーシング(外注)する。誰に何を頼むのか、人の適材適所を見抜き、良い人間関係を築こうと努める。どちらが経営者に向いているだろうか。
 脳の研究をしていて、人の幸福について意外なことが分かってきた。幸せになるための絶対条件があると思ってしまうことをフォーカシング・イリュージョンという。だが、独身でも結婚していても、宝くじに当たっても当たらなくても、実際は幸福感に変わりはない。
 人間の個性は欠点でもあり、長所でもある。与えられた今の自分をありのままに受け入れることが幸せにつながる。